■ 抄録・要旨
| 近年、我が国では、大気中のオゾン濃度が徐々に上昇している。オゾンは、樹木の生育を阻害するという多くの報告があるが、二次代謝物であるテルペン類放出に及ぼす影響は明らかではない。もしオゾン濃度の上昇により樹木のテルペン類放出量が増加すれば、テルペン類はオゾン生成の前駆物質であるため、オゾン生成を加速させる方向に働くことになる。そこで、本研究では、数ヶ月間のオゾン暴露が、コナラとヒノキの幼木のテルペン類(特にイソプレン)放出に及ぼす影響を検討するとともに、高濃度の二酸化炭素とオゾンの複合暴露の影響についても調べた。
暴露試験の結果、高濃度のオゾンや二酸化炭素の暴露により、コナラやヒノキの幼木からのイソプレン放出速度は高まらなかった。このことは、今後大気中のオゾン濃度が上昇しても、我が国の主要樹種であるコナラやヒノキからイソプレンの放出量が増加することはなく、オゾン生成をさらに加速する可能性は低いことを示唆している。
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